アーカイブ: 2020年8月28日

衣は誰が着せるのか

裸の王様は
最後
同情という衣をまとい
去っていった

衣は仕立て屋が
一月かけて縫い
半日で仕上げ
ムネンの生地と
差し出した

今度は誰も
裸と言えないように
まじないを
かけた

あるいは
その中が無垢に見える
衣だった

着せたのは
誰だろう

しまった

九夜十夜

何夜というのかわからないが
今宵の月は綺麗だ。

満月まであと五日かと
しばし眺めながら
左右上方の赤と青の星を見て
浄化されたついでに

気づいてしまう。

次に仕上げようと思っていた
「るいをよもう」という曲は
「あかりの来ない夜」の詩だった。

…….新月やん

今から満月の曲、かけへんで。

どんぶらこ

ダイアリーであるからして、近頃は割と欠かさずタイプしている。

が、けして暇こいているわけではない。人とは会わないが毎日忙しく、落ち着ける時間は貴重だ。

フリートウッド・マックをしばらく聴いたところで – といっても、初期の最重要人物ピーター・グリーンを飛ばしているから、モグリといえばモグリなのだが – 改めてジェニー・ボイドの「素顔のミュージシャン」を読み進める。

いやぁ…

これはきくわ。グサグサくる。素晴らしい、と共に、何度も死刑宣告されてる気になる。

彼ら、彼女らがどうしてミュージシャンに「なったか」、あの曲を「創作できたか」が、いろいろな過程を含め、レコードを聴くだけではわからないレベルで、綴られる。それって、凄いことなんだが、

すべては – 将来が見えていた – ということのかたまり、なので。

間違いなく、素晴らしいんだけどね。

やっぱり、今の自分が読むにはきついものがある。「将来」なんて概念、あまりないもんな。
やり残しはいかん、と必死なだけで。どんな自分でありたい、というイメトレは、小さい頃から散々してきたし、ある程度は実現したようだけれども、今、それだけじゃ根本的なところは叶わない、ということを思い知っているわけで。

近道なんてもともと存在しない。何度も後戻りし、納得したところでしか進めない。

子役俳優からドラムに転向したフィル・コリンズ。幼い頃から町の社会で「画家」扱いされていながら、敢えてソングライターになるためにギターを取ったジョニ・ミッチェル。祖父も叔父も偉大な映画音楽・劇伴作家であり、いくらピアノが上手くても当然としか扱われなかったランディ・ニューマン。テキサスではフットボールに馴染めず吹奏楽、ドラムに道を見出し、やがて叩きながら歌う術を見出したドン・ヘンリー。ドロップアウトしドラムのカタログを見ながらひたすらドラマーになる事を信じ、習うのではなく、バンドマンとして叩き続けたミック・フリートウッド。

道は違えど確かな裏付けを重ねてきた先達の話が、幾多の「いい話」と共に、己にスパイクで蹴りを入れる。

たぶん、人生舐めてたんだと思う。自分は。今頃気づいたか。

コロナ禍を差っ引いても、やっぱなめてたな。

とても歯が立たない、幻想の未来。


だが。

ほっといても、きてしまうんだよ。それは。

まだこないものは、やがてくる。誰にも等しく、来てしまうのだ。

そう思うと、いくら串刺しにされても、どんぶらこ、どんぶらこ、
時間の海を流れていく、漂流の吾輩である。

ガラパゴスや neptune だって、アトランティス、のこされ島だって、その先は開けてると思うからな。

一体どういうことなんだか、わからないけど、

根拠のない時間軸を、不思議な自信と共に流れていく、午前2時14分。

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