反復記号

古くから持っていた楽譜を、再び見ている。楽譜といっても教則本だ。

子供の頃、どれだけ練習していたか、目を瞑っていたかったけれども再び見る。

自分はこれまで、いくつかの事に打ち込み、そのうち半分ぐらいが上達し、ほかはそうでもなく、
いくつかは仕事にもなった。

何事も「トップでなければ意味がない」という強迫観念のようなものを持つ一方、
「優劣や競争に意味はない」という真逆の考えも持っている。
つまり完全な矛盾でバランスをとってきた。

これで得したこともあるし、損したこともある。
つきつめれば損得にも何の意味もない。

が、物事を何度も見返し、感覚の電流を都度発生させて、テープヘッドのように繰り返し感じ取り、表していくことは大切だと思う。反復は何事にもあてはまる。魚の尾びれが動き続けるように。

目をそらし、埃をかぶってきた教則本と楽器を出し、1ページずつたどっていく。
昔どれぐらい自分はやってきたのだろう。
耳を貫く音色と、呼び起こされる感覚とともに、
その練習の甘さに愕然とする。同じ弱点を、そっくりそのまま残している。
これだけしかやっていなければ、そりゃ途中でやめるわけだ。

だが。

こういうことの面倒を見れるのは自分でしかないし、再びやり直すことにする。
生で披露できるとは思えないが、運が良ければこれから、何かしら形にしていけるだろう。


日没は早い。昨日の午前七時頃、海辺であれほど多くの人を射抜いた太陽が、二度目の夕陽となり沈んでいった。

その前一瞬、この部屋には素敵な夕陽がさす。昔から西日の部屋で過ごすことが多かった。それもあってか、少し落ち着くのだ。

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